マズローの5段階欲求と駐在妻のアイデンティティロス防止

マズローの5段階欲求というものをご存知ですか?人間の欲求を階層化したことで知られるアメリカの心理学者アブラハム・マズローが提唱したものです。

こんな考えがあるんだ、くらいに思っていただければよいのですが、この知識を知っているかいないかで、駐在妻が直面しがちなアイデンティティロス防止に大いに役立ちます。

わたし自身のアイデンティティロス経験と、これまでの活動で100名近くの駐在妻さんと接したことで分かったことを、一人でも多くの方が豊かに海外生活を送れるようありのままの情報を発信しています。

目次

マズローの5段階の欲求とは

生理的欲求(Physiological needs)

生理的欲求はピラミッドの基盤、人間の生存のための一番基礎の要素です。マズローの理論によれば、人間はより高いレベルの満足を追求するためには、最初に生理的欲求を満たすことを必要としています。

食欲
睡眠
性欲

の3大欲求と、

空気

衣服や居住

の、生命維持に必要な要素が含まれます。

安全の欲求(Safety needs)

生理的欲求が満たされると、次は安全に暮らしたいという欲求です。

・健康
・身体的安全性
(戦争、自然災害、家庭内暴力、児童虐待などで身体に危険がない)
・感情的な安全性(不安や緊張がなく安定している)
・経済的安全性(安定した収入がある)

社会的欲求(Love and social belonging needs)

マズローによれば、人間は集団の大小に関係なく、帰属意識を必要とし、他の人から愛される必要があります。

大きな社会的グループには会社、スポーツなどのチーム、クラブ、コミュニティ、宗教など。
小さなつながりとしては、家族、親密なパートナー、メンター、同僚、親友など。

愛や帰属要素がない場合、多くの人が孤独や不安になりやすく、うつ病発生率が高くなるとされています。

承認欲求(Esteem needs)

ほとんどの人は自尊心を必要とします。認められたい、尊敬されたい、自信を持ちたいといった気持ちです。このカテゴリには2つの必要な要素があります。

①他者からの尊敬(地位、認識、名声など)
②自尊心
(強さ、能力、習熟、自信、独立、自由など)

自己実現欲求(Self-actualization)

一番上位の欲求は自己実現欲求です。できる限りのことを成し遂げ、できる限りのことをしたいという願望として説明しています。承認欲求までは自己実現を達成するためのプロセスです。目標を達成したい、才能や能力を高めたい、挑戦したい、可能性を最大限発揮したいといった気持ちです。

参考:自己超越欲求(付け加えられた6段階目)(Transcendence needs)

生理的欲求~自己実現欲求までがよく知られる5段階説ですが、マズローが5段階説を発表した後に付け加えた6段階目があります。自己実現欲求までは利己的な欲求ですが、社会を良くしたい、他者に貢献したいなど、文字通り自分のためを超越した、利他的な欲求のことです。

駐在妻が知っておくべき理由

マズローは下層から一段ずつ欲求が満たされることで、次の欲求が生まれるとしています。なのでより高い欲求を満たしたいと思えば下から一つずつクリアにしていく必要があるわけです。この点に、駐在妻になったらこの5段階欲求を知っておくべき理由があります。

日本にいたときと、まず満たすべき欲求が変わる

駐在妻として海外生活がスタートし、多くの方が生理的欲求は満たされる状態であると思います。

次の安全の欲求に関してはどうでしょうか。治安や生活の不安はありますか?現地の生活にある程度慣れ、安全に生活できると感じるまでは、安全の欲求を満たすところからスタートになるかもしれません。

特に退職・休職してきた人は要注意

日本で仕事をしていた時、あなたはどの段階にいたでしょうか。会社というコミュニティに属し(社会的欲求)、あなたの存在や仕事ぶりが認められ(承認欲求)、目標達成のための努力や挑戦などもされてきたことでしょう(自己実現欲求)。

きっと一番上位の自己実現欲求を満たしたいと思っていた方が多いのではないでしょうか。ところが駐在妻になると、下層の安全の欲求を満たすところへ移行するわけです。

仕事をしていた時と、あなたの魅力はなにも変わっていません。満たすべきことが変わっただけで、決して価値がなくなったわけではない、のです。

ですがこの点を理解していないと、自分の価値がなくなった、と感じやすくなってしまいます。

社会的欲求、承認欲求のむずかしさ

生活に慣れたころ、友だちがほしいなと思ったり、つながりがほしいなと思うのは、安全の欲求が満たされ、社会的欲求を得たい段階になっているからです。ところが、思っていた以上に友だちやつながりを作ることに苦労する場合もあります。

承認欲求に関しても、仕事で得ていたものと同等の承認欲求を、主婦業の中で得ることは難しいはずです。

5段階欲求×アイデンティティロス防止

過去の自分や周りと比べない

マズローの理論を知れば分かる通り、渡航後は満たすべき欲求が変わるということをまず理解しておきます。どうしても日本にいたときとのギャップで、価値がない=アイデンティティロスと思ってしまいがちです。繰り返しですが、ステージが変わっただけで決してあなたの価値や魅力がなくなったわけではありません。

またキャリアをストップしている反面、同僚が昇進したり成長する様子を聞くと、自分だけ取り残されたような気がしてしまいますが、比べないようにすることも大切です。

周りの駐在妻と比べないことも意識しておきます。人間は、より近い境遇の人と無意識に比較してしまう性質があるそうです。リアルな知り合いでなくても、SNSにはいわゆるキラキラしたように見える駐在妻がたくさんいます。一言で駐在妻と言っても、その人が5段階のどこにいるのか、現地の生活に慣れるスピード、在住歴、過ごし方も違うわけですから、とっても気になるかもしれませんが比較しないようにします。

焦らず生活に慣れる、心地よさを感じるに専念

5段階理論を知っておけば、何をすべきかが分かってきます。自分が今どこの段階にいるのかを知り、下からひとつずつクリアにしていけばよいわけです。

不思議なもので、ひとつ上の欲求が生まれる時は、意図していなくても素直にわくわくしてきて、自然と動き出しているものです。

何かしなきゃ、成長して帰国しなきゃと焦る気持ちがあるかもしれませんが、まずは生活に慣れる、自分が心地よさを感じることに専念した方が、その先の欲求を得るためには最短のルートです。

まとめ

マズローの5段階理論と駐在妻のアイデンティティロス防止についてお話しました。

・日本にいたときと、まず満たすべき欲求が変わる。
・自己実現欲求の段階にいたとしたら、渡航直後同じところからスタートできるわけではない。
・決してあなたの魅力や価値がなくなったわけではないことを理解する。
・順番に進んでいけば自然と次の欲求を満たそうと動き出すもの。

正直、渡航前に知りたかった知識です。
自分が今どの段階にいるかを知ること、生活に慣れ自然とわくわくするまで焦らないことが大切なのかもしれません。

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